矢野誠,太田勝造,小松原崇史:第6回Market Quality Workshop(2012.09.19)開催報告

9月19日(水)に京都で特別推進研究「経済危機と社会インフラの複雑系分析」研究メンバーによる第6回Market Quality Workshopが開催されました.

◇矢野誠「経済危機と社会インフラの複雑系分析」

最初に特別推進研究「経済危機と社会インフラの複雑系分析」への現地調査ヒアリングが行われたことに対するコメントと今後のプロジェクトの進め方について説明がなされました.

そして,本ポータルサイトmarket-quality.netにおいて紹介されている漁業と市場の質が取りあげられ(こちらを参照してください),日本とノルウェーの水産資源の持続性に関する現状と制度の相違点が説明されました.そして日本の水産資源の持続可能な発展のために,経済学的な観点からどのような研究を行うべきかといった問題提起がなされました.


◇小松原崇史「家計パネル調査データでみる証券市場」

2004年度より毎年家計パネル調査が行われており, 2011年度より特別推進研究「経済危機と社会インフラの複雑系分析」もこの家計パネル調査に参加しています.(過去の記事も参照してください.)

今年度からは証券市場に対する意識調査が新たに追加されています.調査で使用した質問票と得られたデータの特徴についての解説を小松原先生にしていただきました.例えば,多くの場合に,証券市場のイメージは全ての世帯で類似しており,回答者の属性には影響を受けていない,といったことがデータからわかるようです.

またこれからの研究方針などを説明していただきました.詳細な実証結果は書籍・論文の刊行をお待ち下さい.


◇森大輔「国際法の経済学的分析の試み」


法律や制度といった社会インフラは経済活動を行う上で非常に重要な役割を果たしています.例えば所有権や契約法などは市場の効率性や競争上の公正性を保ち,経済が発展するために欠かすことはできません.また経済が発展するにつれて,これまで有効だった法律や制度が経済の非効率性を導き,その結果法律や制度を変更せざるを得ないという状況も生じます.このように法と経済学は相互に関係しており,経済学的な立場から法律を分析すること,法学の立場から経済を分析することは極めて重要です.

森先生は,ゲーム理論などを用いることによって国際関係法に対する経済学的観点からの解釈や評価を与えるといった研究をされています.今回は国際法の経済学的分析の試みについて紹介していただきました.国際法は,法律の中でも,経済学的分析が最も少ない分野の一つでまだまだ研究する余地があるようです.また国際社会の特徴により,国際法とは違った分析ができる可能性があると述べておられました.


◇太田勝造「経済危機と法: 社会調査・統計分析」

第4回Market Quality Workshop において報告された「法と災害」に引き続き(こちらを参照してください),今回は「経済危機と法」に関する研究において実施された社会調査(インターネット調査)についての報告をしていただきました.

市場と法,市場の健全性,またマネーゲームやリスクに対する選好,買いだめ行動について日本人がどのように考えているのかという観点から調査がなされ,この調査データに関する分析結果が紹介されました.その中で,法と経済の現実が乖離している場合には,経済の現実に合うように法を改めることに約6割の人が賛成しているという結果は興味深いものでした.


◇八木匡「理数系教育と所得格差」


経済が成長ためには法律や制度といった社会インフラだけでなく,R&Dが大きな役割を果たします.したがって日本において,R&Dを行う能力を持続的に発展させなければ経済を持続的に成長させることは難しく,日本の競争力が落ちることになるでしょう.R&Dを行う能力を高める要因の一つとして人的資本が挙げられます.この人的資本を高めるには教育,特に理数系教育が非常に重要になってきます.日本では,数学が将来役に立たない,文系学部出身者のほうが理系学部出身者よりも高所得であるという社会通念が持たれてきました.

八木先生たちの研究では,2000年からこれまで様々な調査を行い,データからこの社会通念が否定されるような結果が得られていることが報告されました.

また高卒・大卒間の賃金格差決定のメカニズムについて,マクロ経済の格差への影響,マクロ分析の教育政策への含意などが説明されました.


記事:天龍洋平

第6回Market-Quality Workshop

2012/09/19

日時:
平成24年9月19日(水) 15時30分~19時00分
場所:
京都ロイヤルホテル&スパ 翠峰の間

プログラム
15:45~16:15
矢野 誠(京都大学経済研究所 教授)
「経済危機と社会インフラの複雑系分析~今後のプロジェクトの進め方:現地調査ヒアリングのコメントから~」
16:15~16:45
小松原崇史(京都大学経済研究所 特定助教)
「家計パネル調査データでみる証券市場」
16:45~17:15
森 大輔(熊本大学法学部 准教授)
「国際法の法と経済学の試み」
(休憩)
17:30~18:00
太田 勝造(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
「経済危機と法: 社会調査・統計分析」
18:00~19:00
八木 匡(同志社大学経済学部 教授)
「理数系教育の所得形成に与える影響に関する実証分析」


第6回Market Quality Workshop開催のお知らせ(2012/9/19)

平成24年9月19日にMarket-Quality Workshopを開催いたします.

第6回Market-Quality Workshop

2012/09/19

日時:
平成24年9月19日(水) 15時30分~19時00分
場所:
京都ロイヤルホテル&スパ 翠峰の間

プログラム
15:45~16:15
森 大輔(熊本大学法学部 准教授)
「国際法の法と経済学の試み」
16:15~17:15
矢野 誠(京都大学経済研究所 教授)
「経済危機と社会インフラの複雑系分析~今後のプロジェクトの進め方:現地調査ヒアリングのコメントから~ 」
(休憩)
17:30~18:00
太田 勝造(東京大学大学院法学政治学研究科 教授)
「災害,パニック,集合行為:要因計画法によるネット調査の結果(仮題)」
18:00~19:00
八木 匡(同志社大学経済学部 教授)
「理数系教育の所得形成に与える影響に関する実証分析」


矢野誠,太田勝造,小松原崇史:第4回Market Quality Workshop(2012.06.17)開催報告

2012年6月17日、京都大学経済研究所三田オフィスにて、Market Quality Workshopが行われました。このワークショップで、本プロジェクト研究代表者の矢野誠教授(京都大学)、分担者の太田勝造教授(東京大学)、連携研究者の小松原崇史氏(京都大学)が報告を行いました。

 矢野誠教授は「市場の質と経済危機について」と題し、2000年以降の経済危機がどのように自身の研究のモチベーション形成につながってきたか、その結果どのような研究業績がこれまでに積み上げられてきたか、さらには今後どのような方向へ研究プロジェクトの舵をきっていくか、といった事項について巨視的な視点から報告を行いました。
 小松原崇史氏は、「証券市場の質に関するJHPSデータ」と題し、特に、証券市場に対する人々の主観を計測する設問の導入や、そのデータを用いて行う研究の基本的な構造について報告を行いました。
 太田勝造教授は”Law and Disaster: Information Handling and Information Dissemination in Crisis”と題された最新の研究について報告を行いました。直近の災害時に人々がどの情報元にアクセスし、どのような情報を信頼したのか、といったネット調査のデータをもとにした研究であり、中には、他人がどれ程災害時にパニックを起こすと考えているか、という「愚民観」を調査した項目もありました。ゲーム理論的な災害研究の新たな方向性についてフロアとの議論が交わされました。


第4回Market-Quality Workshop開催のお知らせ (2012/06/17)

平成24年6月17日にMarket-Quality Workshopを開催いたします.

Market-Quality Workshop

2012/06/5

日時:
平成24年6月17日(日) 14時30~18時00分
場所:
京都大学経済研究所 三田オフィス(東京)
http://www.kier.kyoto-u.ac.jp/gcoe/keio/access1.html 
報告1:14:30~15:00
矢野 誠 教授(京都大学経済研究所教授)
市場の質と経済危機について
報告2:15:10~16:10
小松原 崇史(京都大学経済研究所特定助教)
証券市場の質に関するJHPSデータ
報告3:16:30~17:30
太田 勝造(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
Law and Disaster: Information Handling and Information Dissemination in Crisis
質疑応答:30分


太田勝造:第2回Market-Quality Workshop(2012.4.13)開催報告

2012年4月13日に,東京大学大学院法学政治学研究科会議室において,プロジェクトメンバーの太田勝造教授による,研究進捗報告が行われました.太田教授と研究代表者の矢野誠教授とで活発な意見交換がなされ,今後のプロジェクト研究の方向性について相互理解を深めることができました.