Market Quality Workshop第7回 が開催されました(2012/10/4)

market-quality.net の記事『Market Quality Workshop第7回 が開催されました(2012/10/4)』より転載

平成24年10月4日に京都大学において,第7回Market-Quality Workshopが開催されました.

今回はAvinash K. Dixit先生(Princeton University),大野由夏先生(北海道大学),佐藤健治さん(京都大学)に研究報告をしていただきました.ここではDixit先生と大野先生の報告について紹介します.

◇Avinash K. Dixit, “A Real Options Perspective on the Future of the Euro.”

近年ユーロ圏の解体が現実味を帯びてきており注目が高まっています. 本研究ではユーロ圏の解体に関して,リアルオプションの手法を用いて分析がなされています.

投資を行う際に,「今投資すべきか或いはずっと投資すべきでないか」という選択だけでなく,「いつ投資するか」という選択肢も考慮される必要があります.リアルオプションでは,この「いつ投資するか」,つまり「より良い機会を待つ」という選択肢の価値も考慮に入れています.これは投資に費用がかかり,かつ投資が不可逆である場合に有効な手法です.

ユーロ圏の解体は,まさにリアルオプションによる分析が有効な問題です.というのもユーロ圏の解体には多大な費用がかかり,かつ一度解体すれば再度形成するのは困難だからです.

具体的には,各国の状態変数(理想的なマネタリーターゲットとの乖離)が各国の確率的ショックだけでなくユーロ圏全体の確率的ショックにも依存すると仮定され,ユーロ圏の解体が最適停止問題として定式化されています.結果として,解体を待つ選択肢の価値はゼロではないもののあまり大きくはなく,ユーロ圏は「今解体するかずっと解体しないか」の選択に限定したところで,さほど大きい経済的損失は発生しないと言えるようです.


◇Yuka Ohno, “International Harmonization of the Patent-Issuing Rules.”

特許制度は国によって異なります.米国ではfirst-to-inventと呼ばれる,先に発明した者が特許を取得できる制度が採用されていました.他方,米国以外では,first-to-fileと呼ばれる,先に特許出願をした者が特許を取得できる制度が採用されており,こちらが標準的な制度として認識されています.近年,米国でもfirst-to-fileに制度を移行しました.また,制度が一致することをもってinternational harmonizationと呼ばれます.

本研究では,この制度移行による影響が分析されています.特に制度移行がR&Dのインセンティヴに与える影響まで踏み込んで議論がなされ,first-to-fileの制度に移行することで多くの場合にR&Dのインセンティヴは低下することが報告されました.

 

Market Quality Workshop 第14回が開催されました(2013/03/19)

平成25年3月19日に京都大学経済研究所三田オフィス(東京)において,第14回 Market-Quality Workshopが開催されましたのでご報告いたします.

今回は古川雄一先生(Simon Fraser University, Chukyo University)に”Perpetual Leapfrogging in International Competition”と題する研究報告を行って頂きました.

歴史的に見て,幾度となく技術水準のリーダーがある国から別の国へと移ってきました.リーダーである国は技術の比較優位を持っていますが,比較優位のなかった技術的に後発の国がイノベーションなどによってリーダーを追い抜かすという現象が生じてきました.このような現象はleapfrogging(蛙飛び現象)と呼ばれています.

なぜleapfroggingは生じるのか,また繰り返し生じるのはなぜかという問題は経済学者の関心を集めてきました.先行研究でもこれらを説明する試みがなされてきましたが,十分とは言えませんでした.古川先生は,これら2つの問題を同時に,また市場均衡の結果として説明するような内生的モデルを提示されています.


WEAI Pacific Rim Conference

3月14~17日の4日間,慶応義塾大学三田キャンパスにて,Western Economic Association International (WEAI) が主催する国際学会 WEAI 10th Biennial Pacific Rim Conference が開催され,本プロジェクトもホストとして参加しております。世界40カ国から534名の参加者を集め,140のセッションで423の研究報告が行われました。通常セッションの他にもノーベル賞経済学者ロバート・エングル先生を始め,著名な先生方を招いた基調講演・パネルディスカッションが開催されました。16日に開かれたエングル先生の基調講演は慶応義塾・京都大学の両学生に,最終日のパネルディスカッションは一般の方に,参加・聴講を開放する試みを行い,盛況のうちに閉会することができました。

本研究プロジェクトでは10 のオーガナイズドセッションを企画しました。以下に,セッションタイトルと報告論文をご紹介いたします。セッションの詳細はセッションごとのページをご覧ください。(補足: 経済学の学会報告では,研究発表に際して「報告者」が事前に論文を提出し,指定された「討論者」が事前に論文を読み,「報告者」の発表後に登壇してコメントするというスタイルが標準的です)

2013-03-14

セッション (8) Capital Formation and the Quality of Capital Market

企画: 矢野誠 / 座長: 小松原崇史

Japanese Household Behavior in the Stoch Market
報告者: Takashi Komatsubara* and Makoto Yano
討論者: Daisuke Ida
Financial Market Imperfections in an Open Economy
報告者: Daisuke Ida
討論者: Yohei Tenryu
Interest in Private Assets and the Voracity Effect
報告者: Yohei Tenryu
討論者: Takashi Komatsubara

2013-03-15

セッション (17) Game Theoretic Approach to Crisis Management

企画: 矢野誠 / 座長: 太田塁

Pricing an Obsolete Product When a Firm Releases a New Substitute
報告者: Rui Ota* and Hiroshi Fujiu
討論者: Tetsuya Hoshino
On Legal Institution Governing International Watercourses: A Game Theoretic Analysis
報告者: Takayuki Oishi
討論者: Rui Ota
The Phase Transitions of Equilibria: Social Media in the Arab Spring and the England Riots
報告者: Tetsuya Hoshino
討論者: Takayuki Oishi

セッション (40) Macroeconomic Dynamics on Human Capital

企画: 矢野誠 / 座長: 八木 匡

Optimal Strategy for Knowledge Creation by Collaborating with Consumer
報告者: Tadashi Yagi
討論者: Hiroshi Fujiu
Changes of Female’s Life Satisfaction and Happiness before and after Special Life Events
報告者: Risa Hagiwara
討論者: Tadashi Yagi
Motive for Two-sided Intergenerational Transfers
報告者: Hiroshi Fujiu
討論者: Risa Hagiwara

セッション (57) GCOE-IJET McKenzie Prize Special Session

企画: 矢野誠 / 座長: 西村和雄

Lionel McKenzie: The Economist and the Chairman
報告者: Ronald Jones
Rethinking Consumer Surplus from General Equilibrium Viewpoints
報告者: Takashi Hayashi
Efficient Matching under Distributional Concerns: Theory and Applications
報告者: Fuhito Kojima* and Yuichiro Kamada

2013-03-16

セッション (75) Market Quality Dynamics

企画: 矢野誠 / 座長: 矢野誠

Chaotic Industrial Revolution Cycles and Intellectual Property Protection in an Endogenous-Exogenous Growth Model
報告者: Makoto Yano* and Yuichi Furukawa
討論者: Minako Fujio
Discounted Optimal Growth in the Two-Sector Leontief-Shinkai Model
報告者: Minako Fujio
討論者: Kenji Sato
Ergodically Chaotic Growth in the Matsuyama Model
報告者: Makoto Yano, Kenji Sato* and Yuichi Furukawa
討論者: Daishoku Kanehara

セッション (79) Growth and International Trade

企画: 矢野誠 / 座長: Yan Ma

Learning by Doing and Fragmentation
報告者: Yan Ma* and Eric Bond
討論者: Yunfang Hu
Fiscal Policy and Structural Change in a Growth Economy with Home Production
報告者: Yunfang Hu* and Kazuo Mino
討論者: Katsufumi Fukuda
The Effect of Globalization in a Semi Endogenous Growth Model with Firm Heterogeneity, Endogenous International Spillover, and Trade
報告者: Katsufumi Fukuda
討論者: Yan Ma

セッション (86) Law and Economics on Market Infrastructure

企画: 矢野誠 / 座長: 坂上智哉

Japanese Domestic Airline Network Optimization in Consideration of Transit Passenger Cost
報告者: Tomoya Sakagami and Hiroki Inoue* and Yasuhiko Kato
討論者: Tetsuro Mizoguchi
Expansive Urban Growth Boundary
報告者: Tomoru Hiramatsu
討論者: Hiroki Inoue
Bribery Prevention and Efficiency Wage
報告者: Tetsuro Mizoguchi
討論者: Tomoru Hiramatsu

セッション (93) Macroeconomics of Technology and Human Capital

企画: 矢野誠 / 座長: 出井文男

‘Anti-trust Policy’ vs ‘Industrial Policy’
報告者: Fumio Dei*, Takakazu Honryo and Makoto Yano
討論者: Yuichi Furukawa
Perpetual Leapfrogging in International Competition
報告者: Yuichi Furukawa
討論者: Taiyo Yoshimi
Macroeconomic Dynamics in a Model with Heterogeneous Wage Contracts
報告者: Taiyo Yoshimi* and Muneya Matsui
討論者: Yuichi Furukawa

セッション (122) Employment and Income Inequality

企画: 矢野誠 / 座長: 黒川義教

Task Variety and Skill Flexibility: A Simple Unified Theory of Between- and Within-group Inequality
報告者: Yoshinori Kurokawa* and Manoj Atolia
討論者: Hiroaki Miyamoto
Comparative Advantage on Job Selection, Human Capital Accumulation and Persistent Income Inequality
報告者: Yasunobu Tomoda and Koichiro Sano
討論者: Miki Matsuo
Growth and Non-Regular Employment
報告者: Hiroaki Miyamoto
討論者: Yasunobu Tomoda

2013-03-17

セッション (132) International Trade and Development

企画: 矢野誠 / 座長: 大川昌幸

Partner Choice and Technology Transfer In International Joint Ventures under Ownership Share Regulation
報告者: Masayuki Okawa
討論者: Hiroshi Ohta
Macroeconomic Dynamics of Human Development and the Creation of a Market Economy: Indeterminacy and Bifucation Due to Productive Consumption Externality
報告者: Ichiroh Daitoh
討論者: Seiichi Katayama
Carbon Taxes in a Trading World
報告者: Seiichi Katayama, Ngo Van Long and Hiroshi Ohta*
討論者: Ichiro Daitoh


Market Quality Workshop 第12回が開催されました(2013/02/14-15)

2月14日に京都大学経済研究所,15日にコープイン京都において第12回 Market Quality Workshop,

Economic Crisis and Market Quality が開催されましたのでご報告します.

2月14日

◆ 小松原崇史(京都大学)家計パネル調査データでみる証券市場


2004年度より毎年家計パネル調査が行われており, 2011年度より特別推進研究「経済危機と社会インフラの複雑系分析」もこの家計パネル調査に参加しています.

 今年度より証券市場に対する意識調査が新たに追加されており,前回に引き続き小松原先生に調査で使用した質問票と得られたデータの特徴についての解説をしていただきました.今回の報告では,新たに行われた計量分析についての結果も解説していただきました.

 本研究は現在進行中ですので,詳細な実証結果は書籍・論文の刊行をお待ち下さい.


2月15日

◆ 東三鈴(千葉経済大学)Two-Sided Transfers from Adult Children of Elderly Persons


現実の経済において,多くの中年(成人)世代が若年世代(子ども)を育てる一方で,老年世代(親)の補助・介護などを行っています.先行研究では子どもをもつ中年世代は老年世代への補助・介護をあまり提供しないという逆の結果が得られています.しかしながら,the Health and Retirement Study (HRS)のデータからは,そのような中年世代のなかで子どもへの人的資本投資をするほど,より老年世代への補助・介護を提供する傾向があるという逆の結果がわかるようです.

本研究では,データから得られる事実を説明する理論モデルとそれを実証的に支持できる例を示しています.理論モデルにより,中年世代は若年世代である子どもが将来自身の補助・介護をしてくれると予想するときのみ老年世代への補助・介護と若年世代への人的資本投資としての所得移転を行い,そのように予想しない時には自分自身で将来の介護費用への貯蓄を行うことが報告されました.



◆ 太田塁(千葉経済大学)The “Law of Rising Price” in an Imperfectly Competitive Declining Industry


完全競争市場では一般的に需要が衰退するにつれて製品の価格が低下することが分かっています.しかし,いくつかの衰退産業では需要が衰退するにつれて製品の価格が上昇することが観察されます.

 本研究では,この事実を説明する理論モデルを構築し,それを実証的に支持する例を提供することを目的としています.具体的には,消費者数の減少による需要の低下をその産業(市場)の衰退と捉え,参入・退出が自由なクールノー競争のモデルを用いることにより製品価格の上昇を理論的に説明しています.また日本の木製テーブル市場のデータを用いて,この理論モデルが支持されることが報告されました.



◆ 藤生裕(千葉経済大学)Motive for Two-Sided Intergenerational Transfers


一般には,ある経済主体が別の経済主体への利他性(altruism)を有すると,その方向への所得移転が行われ,利他性の上昇によりその移転の程度が高まると信じられています.

本研究では,親から子供へ,また子供から親へという双方向の利他性が存在する経済における世代間の所得移転に関する理論的分析が行われています.特に親から子どもへの利他性が変化したときと子どもから親への利他性が変化したときを考え,所得移転がどのように変化するかに注目しています.

主要な結果として,親から子どもへの利他性が大きくなるときは,親から子どもへの所得移転は増加するものの,子どもから親への利他性が小さくなるとき,ある状況下では子どもから親への所得移転が増加することが示されました.



◆ 瀬古美喜(慶応義塾大学),直井道生(東京海洋大学)Subjective Belief, External Information and Earthquake Insurance Purchase: Evidence from Post-Quake Japanese Data


2011年に起きた東日本大震災により改めて日本における大地震の危険性と災害を軽減する十分な測定の必要性が明らかになりました.その中でも地震保険は地震災害を軽減する最も重要な測定する方法の1つです.しかしながら,日本では災害への意識は高まっているものの,家計の地震保険加入率は依然として高くはありません.

本研究では,このような家計の行動を説明するために,最適期待の枠組みを用いて家計の保険購入のモデルを構築し,家計の保険契約に関する行動の観察されたデータを用いて理論の帰結を検証しています.

実証結果はモデルから導かれる主要な帰結を一般的に支持しており,以下のような結果が得られています.1つ目は,家計の保険購入の意思決定を左右するような客観的な地震確率に対する臨界値が存在し,臨界値を越えるような確率に直面する家計は保険を購入する傾向があることです.2つ目は,災害危険情報を集めている家計はその臨界値の値が小さいことです.このことから災害危険情報を十分に認知してもらうことで,災害軽減活動をより進めることが期待できそうです.



「就業と生活について」アンケート調査実施のご案内とご協力のお願い

京都大学経済研究所 特別推進研究「経済危機と社会インフラの複雑系分析」(代表:矢野誠 京都大学経済研究所 教授)では、経済政策評価および社会科学研究を目的として、慶應義塾大学と協力し、「就業と生活について」のアンケート調査を実施いたします(調査期間:2013年2月~3月)。

本調査は、京都大学経済研究所が調査の企画・設計を行い、実施を世論調査の専門機関である(社)中央調査社に委託しているものです。 調査結果は、すべて統計的な処理を施したうえで非営利・学術目的での分析にのみ用いられますので、個人のお名前やお答えの内容が公表されることは、一切ございません。 対象となられている方には大変お手数をお掛けしますが、何卒ご協力をお願い申し上げます。

パネル調査に関する問い合わせ:
京都大学経済研究所パネル/アンケート調査問合せ窓口
E-mail:panel@market-quality.net
TEL: 075-753-7129   月~金曜日(9:30~16:30)

社団法人 中央調査社
E-mail: office@crs.or.jp
TEL: 0120-48-5351 *フリーダイヤル 月~金曜日(9:00~17:00)


浅野貴央:経済研究所研究会で報告します(2013/01/24)

平成25年1月24日に,経済研究所研究会で,本プロジェクトメンバーの浅野貴央 岡山大学大学院社会文化科学研究科准教授が報告を行います.

経済研究所 研究会

2013/01/24

日時
2013年1月24日(木) 15:30–17:00
講演者
浅野 貴央 (岡山大学大学院社会文化科学研究科准教授)
講演タイトル
“An Ambiguity-Free Asset and Portfolio Inertia under Maxi-min Expected Utility”
会場
京都大学経済研究所 北館 N202号室


Market-Quality Workshop 第11回(2013/01/15)

平成25年1月15日にMarket-Quality Workshopを開催し,Harry Wu氏に研究報告を行って頂きました.

Market-Quality Workshop

2013/01/22

日時
2013/01/15 16:00–18:00
講演者
Harry Wu氏, 一橋大学経済研究所
講演タイトル
“RETHINKING CHINA’S PATH OF INDUSTRIALIZATION”
会場
京都大学経済研究所 三田オフィス(東京)


西村和雄:基調講演 Nonlinear Dynamics in Economic Theory(2012/11/27)

2012年11月27日〜29日に京都大学宇治キャンパスにある化学研究所共同研究棟大セミナーホールで開催されたKyoto University-Durham University Joint International Symposium 2012: Emergence and Feedback in Physical and Social Systemsで,本プロジェクトメンバーの西村和雄 京都大学経済研究所特任教授が非線形経済動学についての基調講演を行いました.

西村教授基調講演


西村和雄:龍谷大学経済学部教育・研究センター記念講演会にて講演(2012/12/05)

本プロジェクトメンバーの西村和雄教授が,2012年12月5日に,龍谷大学経済学部教育・研究センター記念講演会において,

  • 経済学とは何か
  • 経済学を学んで役に立つことは
  • 経済学の勉強法
  • 経済学検定試験について
  • 創造性とは何か
  • などについて,「君はなぜ,経済学を学ぶのか」というテーマで講演を行いました.
    立ち見を含めた500人程の学生が熱心に講演を聞き,質問も活発に出る,講演者・参加者双方にとって大変有意義な講演会となりました.